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アメリカの鉄板焼きレストランは、通常HIBACHI Restaurant(ヒバチ レストラン)と呼ばれています。日本人にとって「火鉢」といえば、昔話で手を温めたりお湯を沸かしたりしていたもの、というイメージなので違和感がありますが、これはアメリカ独特の呼び方のようです。そしてこのHIBACHIは、スシと同様、アメリカで人気の日本料理となっています。今回は、「鉄板焼き」という言葉を知らない人は多くても、なぜアメリカ人は鉄板焼きが好きなのか、その理由を解説します!
「HIBACHI」はアメリカオリジナルの表現
アメリカ人に「鉄板焼きは好きですか」と尋ねると、おそらく「そんな料理(言葉)は聞いたことがない」と答えるでしょう。しかし、実際に訪日したアメリカ人を鉄板焼きレストランに連れて行くと、”なんだ、HIBACHI Restaurantのことだったのか!”と言われるかもしれません。
実は多くのアメリカ人は何度も鉄板焼きを食べていますが、「HIBACHI」もしくは「ジャパニーズ・ステーキハウス」と認識しているので、「鉄板焼き」と言われてもピンとこないのです。
この「HIBACHI」の例は、本物の日本の様式や体験ではなく、むしろアメリカの習慣やオリジナリティが加わることで、定着した良い例だといえるでしょう。
アメリカにおける鉄板焼きの簡単な歴史
アメリカには、20世紀初頭から日本食レストランができ始め、そのほとんどは、日本からの移民が利用するレストランでした。そして日本での鉄板焼きブームから遅れること20年、1960年代に、アメリカ初の鉄板焼きレストラン「BENIHANA」がオープンしました。
実は、オープン当初は全く人気がありませんでした。今とは違い、保守的な風潮だったからだと考えられます。しかし、『ニューヨーク・タイムズ』紙の好意的なレビューがきっかけで、BENIHANAは新たなトレンディレストランに変貌を遂げました。1980年代には、アメリカ国内に50のBENIHANA Restaurantができ、今では世界中に広まっています[1]。
なぜアメリカ人は「鉄板焼き」ではなく「HIBACHI」と呼ぶのか?
BENIHANAのホームページや多くの競合店のホームページでは、この調理スタイルを正しく「鉄板焼き」と呼んでいます。しかし、ほとんどのアメリカ人はこの言葉を知りません。そしてなぜこのようなことが起こっているのか、定かではないのです。
たとえば、店内に火鉢や七輪のようなものがあるか、といえば、答えはNOです。アメリカのレストランでは室内で炭を燃やすことに関する規制があるため、日本の焼肉店のようなスタイルでは営業できません。多くのレストランでは、大きな鉄板焼きテーブルしかないのに、「HIBACHI Restaurant」を名乗っています。
「HIBACHI」という言葉が広がったのは、メニューの影響かもしれません。多くのレストランでは、鉄板焼きのメニューが、HIBACHIステーキ、HIBACHIチキン、HIBACHIサーモン、など「HIBACHI 〇〇〇」と表記されています。しかし、なぜ「HIBACHI」と名乗っているのかはわからないのです。
日本の鉄板焼き=ジャパニーズ・ステーキハウスが広まった理由
現在、HIBACHI Restaurantなど、全米各地にたくさんのジャパニーズ・ステーキハウスがあります。名前はそれぞれ違いますが、このスタイルのレストランがなぜアメリカのレストランで定番になったのか、それにはいくつかの理由が考えられます。
たとえば、シェフが大きな鉄板で人数分の料理を作るというスタイル、メニュー、そしてヤムヤムソースが挙げられるでしょう。
・豪快な調理を目の当たりにできる
BENIHANAが人気を得るきっかけとなった理由にもつながることですが、今日でもジャパニーズ・ステーキハウスが愛されているのは、シェフが料理を作る様子を見ることができる点にあります。基本的なアメリカのレストランは、調理スタッフと客席が明確に分かれています。シェフは厨房に隠れていて、お客さんはシェフの姿を見ることも会うことありません。しかし、HIBACHI Restaurantでは、シェフが調理する様子を目の前で見ることができるので、食事が楽しくなります。
目の前でシェフが料理をするのは、まるで演劇を見ているようなものです。なお、アメリカ人はシェフが料理をしているときに邪魔をするのは失礼にあたると考え、シェフが料理をしながら手品をしたり、お客さんとゲームをしたりすることはあっても、お客さんがシェフに話しかけることはあまりありません。
・メニューが好まれている
アメリカ英語には「I’m a meat and potatoes person」という言葉があります。つまり、食に対してあまり冒険をしないということです。基本的には肉、ポテト、ライス、そして野菜という、伝統的なアメリカンスタイルの食事が好まれます。ジャパニーズ・ステーキハウスは、そんなアメリカ人の食に対する期待に応えるために最適なメニューを用意しているのです。だからこそ日本食が苦手なアメリカ人でも、食べやすくなっています。
・ソース
HIBACHI Restaurantで最も重要なポイントがステーキを注文したときに出される「ヤムヤムソース」です[2]。お店独自のレシピで作られていることもあれば、テーブルに瓶が置いてあり、それを使って食べることもあります。HIBACHI Restaurantでは、他では食べられないからと、このソースを注文する人がいます。しかし、彼らがお気に入りの日本のステーキハウスで食べているこのソースは、実はアメリカで発明されたものなのです[3]。アメリカ南部のジャパニーズ・ステーキハウスや中華料理店を経営するテリー・ホー氏によって生み出されたこのソースは、マヨネーズをふんだんに使っているため、ピリッとしたなかにも甘さがあるのです。日本のステーキハウスで長年使われてきたソースですが、決して日本的な味ではありません。
まとめ:愛され方は国それぞれ
ジャパニーズ・ステーキハウスといっても、日本らしさはあまり感じません。一番人気のメニューはステーキや焼き野菜のようなアメリカの主食で、料理につけるソースはアメリカの創作、シェフとの接し方までもアメリカらしさが垣間見えます。BENIHANAの創業者であるロッキー青木氏は、できるだけ日本的なものにすることにこだわりを持っていましたが、それ以外のジャパニーズ・ステーキハウスはこの伝統を守ってきませんでした。
残念ながら、ほとんどのアメリカ人は、彼らの体験が日本の様式や伝統に則った正式なものではないことに気づいていません。ですが、この鉄板焼きの広がりを見てみると、おそらく本格的な日本食を楽しむためにこれらの店で食事をしているわけではなさそうです。シェフの実演を見たり、好みの調味料を味わったり、自分たちに親しみのあるアメリカナイズされた食体験を楽しむことが重要なのでしょう。
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参照元
- https://www.theringer.com/2018/7/24/17606204/benihana-rocky-aoki-feature
- https://www.target.com/p/terry-ho-39-s-yum-yum-sauce-16oz/-/A-48325711?ref=tgt_adv_XS000000&AFID=google_pla_df_free_local&CPNG=Grocery&adgroup=212-30
- https://www.npr.org/sections/thesalt/2019/07/29/741912379/yum-yum-sauce-the-making-of-an-american-condiment
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