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ハリウッドは過去、アニメの実写化に挑戦してきました。多くが「とある理由」で失敗してきました。しかし、最近Netflixで公開された実写版ONE PIECEは、そのジンクスを打破し、ファンや批評家から高い評価を受けています。どのようにして成功に導くことができたのでしょうか?
はじめに
日本アニメの人気は絶好調で、特に尾田栄一郎のONE PIECEの人気は絶大。この夏、Netflixで公開されたONE PIECEの実写版シリーズは、ファンからも、批評家からも好評を受けました。ハリウッドは何度もアニメの実写化を試みていますが、原作とかけ離れすぎているため、評判が悪いことで有名です。
アメリカとハリウッドがアニメ好きなのは周知の事実。日本のアニメの影響は90年代からアメリカの映画界に存在し、その影響は年々強くなっています。ここ20年、アメリカの主流文化におけるアニメ人気の高まりに伴い、日本の古典アニメ実写映画化が数多く試みられてきました。この伝統に新たに加わったのがONE PIECE。
残念ながら、これまでハリウッドで映画化された作品は、経済的にも振るわず、原作にも忠実ではなかったという歴史があります。ほとんどの映画化は、ファンからも新しい観客からも批判が殺到します。しかし、ONE PIECEの実写版テレビシリーズは、アニメの映画化としては初めて成功を収めたようです。
ONE PIECEの実写化は、過去のハリウッドアニメの試みとどう違うのでしょうか?
アニメ実写化とハリウッド
ここ数十年、アメリカの一般視聴者にアニメを届けようとする試みは何度もありました。ハリウッドはSpeed Racer(マッハGoGoGo)、Ghost in the Shell(攻殻機動隊)、Battle Angel Alita(銃夢)といった有名なアニメの実写化を試みましたが、いずれも評価は賛否両論、あるいは否定的でした。
このパターンの最も悪名高い例のひとつが、Dragonball Evolutionと呼ばれるドラゴンボールの実写映画です。Dragonball Evolutionは、世界的に有名な鳥山明のドラゴンボールシリーズを非常にゆるやかにベースにしており、このような愛すべきアニメのフランチャイズをハリウッドに持ち込もうとした初めての試みの1つでした。
ドラゴンボールは、90年代から北米やヨーロッパで長く愛されてきたアニメです。ところが、この映画が公開されたとき、とんでもない茶番だと言われたのです。原作の主要な設定が変更され、主人公たちの性格も変わり、クリリンのような原作での主要キャラクターも省かれました。映画の舞台はアメリカの普通の高校で、大人びたキャラクターが登場し、アメリカのアクション映画の定石を完璧に踏襲。
アニメが熱心なファンの間で人気があることは、特にマーケティング担当者の間ではよく知られています。しかし、つい最近まで、アニメファンはニッチすぎて独占的にターゲットにすることはできないと考えられていました。より広い網を張るために、制作会社は、平均的なアメリカ人映画ファンにとってより “親しみやすく “なるような原作の変更を要求しました。
このため、結局Dragonball Evolutionのような多くの実写映画は、アメリカの一般的な観客を惹きつけるには新しすぎる題材であり、かつ古くからのファンたちは自分たちの好きな物語が再構築されてしまっては興味がないという、有り得ないと思われる状況に追い込まれたのです。つまり、原作とかけ離れすぎていて、誰も興味を持たなかったのです。
しかし、実写版ONE PIECEの場合、ファンは原作と全く違う作品になるという心配をしませんでした。それどころか、公開を心待ちにしていたのです。
なぜでしょうか?
ONE PIECEの実写シリーズは、ハリウッドアニメの呪縛をどのように打ち破ったのか?
ハリウッドでアニメの映画化作品が制作されると、プロデューサーはその新作をアニメの原作から遠ざける傾向があります。この過ちは、「とある理由」が原因で何度も繰り返されてきました。それは、ハリウッドの重役たちが、アニメファンはターゲットにする価値のある大きなグループだと思っていなかったということです。
ですが、実写版ONE PIECEのプロデューサーは、違いました。原作のONE PIECEが世界中にファンを持ち、そのファン層が日々拡大していることを知っていたのです。現在進行中のアニメシリーズとその製作者から実写作品切り離して作ることは不可能でしょう。そこで、他の実写映画の制作方法とは正反対に、ワンピースで最も愛されているもの、つまり原作に寄り添ったのです。
ONE PIECEの実写化は、初放送の1週間で、10億分以上の再生時間を記録しました[1]。これは、Netflixのオリジナルシリーズで“最高”を記録したものです。
要因は、ONE PIECEの生みの親である尾田栄一郎が常に関わっていることと、オリジナルの日本人声優と常につながっていることです。
尾田栄一郎が実写版ONE PIECEの制作に関与していることは、発表以来、シリーズの大きなセールスポイントでした。これは、尾田栄一郎が自身の関与なしに番組を制作することを拒否したことだけなく、多くのONE PIECEファンが尾田栄一郎の構想に惹かれてONE PIECEシリーズを愛しているからこその重要な選択でした。また、尾田は新作の発表前にファンに向けて手紙を書き、実写版ONE PIECEが尾田のお墨付きであることを世界中のファンに知らせました。
成功のもう一つの要素は、日本のオリジナルアニメ声優の参加でした。2021年12月に開催されたONE PIECE JUMP FESTA 2022 SUPER STAGEでは、早くもオリジナル声優が日本のファンに向けて新作の実写版をアピールしました。Netflixは実写版ONE PIECEの公開が近づくにつれ、ルフィ役のイニャキ・ゴドイが来日し、ルフィのオリジナル声優である田中真弓の祝福を受けるという内容のプロモーションビデオを公開[2]。そして実写版ONE PIECEの日本語吹き替えもオリジナル声優が担当することを発表しました。
ONE PIECEの実写化はアニメファン以外にもアピールできたのか?
アメリカでのアニメ映画化にとって最大のハードルのひとつは、一般的なアメリカ人に受け入れられやすいストーリーを作ることです。人気のある少年アニメは、多くのアメリカのメディア消費者にはなじみのない方式をとる傾向があります。物語は長く引き延ばされ、1シーズン完結型ではありません。最近では、僕のヒーローアカデミア、呪術廻戦、鬼滅の刃のような作品がこの型を破っており、これが人気の要因になっていることは間違いありません。しかし、90年代後半に放送を開始したONE PIECEは、非常に長いストーリーであるため、これらの新しいシリーズのように簡単に視聴できるものではありません。
実写版ONE PIECEは、物語を忠実に実写化する一方で、サブスクリプションサービスのような限られた時間の制約に合わせるために必要な要素を変更するという、両者のバランスをうまくとったのです。この映画化が成功した証拠に、米映画サイトRotten Tomatoesでの評価が挙げられます。現在、実写版ONE PIECEは批評家から85%、観客から95%のスコアを獲得しています[3]。
多くのONE PIECEファンは実写版ONE PIECEを観て、アニメに興味を持った友人がいると言っています。これは、実写版ONE PIECEが公開された週に「ONE PIECEアニメを観る」という検索ワードがGoogle Trendsのデータで過去最高の数値を記録したことからも裏付けられます。
結論
現在、ONE PIECEの実写化は第2シーズンまで決定しています。アニメのハリウッド実写化という点で、これは事実上前例がありません。ですが、アメリカのTVエンターテインメント業界は、全米規模の脚本家ストライキにようやく終止符を打ったばかりなので、第2シーズンがいつ公開されるかは不明です。
ハリウッドが学ぶべき実写版ONE PIECEの教訓は、日本の原作の魅力こそが世界的な人気を生んだということ。これには、原作者と協力すること、原作キャストとつながること、そして最大のファンの期待を尊重することが含まれます。
日本の製品やサービスを海外に輸出し、成功を収めるには、英語にはない日本語が持つ独特のニュアンスを正確に伝え、実写版ONE PIECEが行ったように現地の文化の背景や顧客の感情、期待を深く理解することが重要です。この文化的な橋渡しの役割を果たすためには、現地の市場や顧客の感性に精通した専門家の意見や支援が不可欠です。良いPRアイデアを考え、クライアントとタレントの間に立って仕事ができるコンサルタントやエージェンシーを雇うことは、その機会を活かすための最善の結果をもたらすでしょう。
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