ホーム ブログトップ 【ブランド構築成功例】30年を経て突然スターダムに躍り出た「ラクロワ」

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米国マーケティングトレンド研究会 2022.03.11

【ブランド構築成功例】30年を経て突然スターダムに躍り出た「ラクロワ」

ラクロワ(LaCroix)は、米国全土で人気を博しているスパークリングウォーターブランドです。1980年代から存在しているブランドですが、ブレイクしたのはその30年後の2010年。ブランド戦略の見直しに伴い、パッケージのリニューアルとSNSへ注力したことにより、ロングセラーブランドの仲間入りを果たしました。いったいどのようにブランド構築に成功したのでしょう?

ラクロワの誕生:元々はアメリカの中西部でしか知られていなかった?

ラクロワは1980年代から店舗の棚には存在しており、もともとはスパークリングウォーターブランドの競合「ペリエ」の対抗馬として誕生しました。様々なフルーツフレーバーが展開されていますが、砂糖や人工甘味料などが使用されておらず、ソーダより健康的な飲み物であることが特徴です。

1990年代には、中西部(アメリカ合衆国の中央部北側。ウィスコンシン州、オハイオ州、インディアナ州 等)の主婦に好まれる飲み物となりましたが、他の地域ではほとんど知られていませんでした。

消費者調査を基にパッケージデザインのリニューアル

ラクロワの成功要因の1つは、そのパッケージにあります。Quirks.com(ミネアポリスに本社を置くマーケティングリサーチメディア) が行った調査によると、ラクロワは1990 年代にスーパーの飲料棚で競合の炭酸商品より目立つよう、パッケージのリブランディングを行っています。

その際、100人の一般消費者に調査を実施しています。配置をランダム化するコンピュータプログラムを駆使し、消費者にラクロワ、スパークリングウォーターの競合商品、ソーダを含む12の異なる炭酸飲料が配置されている3つの棚を見せ、消費者の目の動きを追跡したのです。どのブランドが最も注目されているか、また、各ブランドがどれだけ早く見つけられるかを測った結果、ラクロワの新パッケージが優れていることが確認されました。参加者の84%が、棚に配置されるラクロワを平均2.4秒認識することができ、これは、競合商品と比較し2番目に短いタイムという好成績でした。さらに、参加者の17%がラクロワのパッケージは魅力的であると述べ、これは調査で使用したすべてのブランドの中で最も良い評価でした1

アメリカ中西部から全米へ!ミレニアル世代から求められるブランド

ラクロワは、昔の世代ほど糖分の多いソーダが好きではないミレニアル世代のアメリカ人をターゲットに定めました。フルカロリーのソーダの売り上げは、1995年から2015年までに25%減少しており、ミレニアル世代はミネラルウォーターを飲むようになっていました2。砂糖飲料に代わる健康的な代替品を求めるこの動きは、ラクロワが中西部から東海岸と西海岸の市場に進出する絶好の機会となりました。

さらに、ラクロワのマーケティング担当者は、この飲料を購入する主要な顧客層の1つがオフィスワーカーであることに気付きました3。そこで、ブランドの認知度と信頼を築くために、オフィス用品店の棚にラクロワを卸し始めました。同時に、提供するフレーバーの数を15種類から20種類に増やすことで、多くのダイエッターやブロガーがソーダやアルコールの代替品としてラクロワを推奨し始めました。この時期、ラクロワはWhole30と呼ばれる人気のあるダイエット法にも取り入れられ、ブランドの認知度は一気に高まりました。

やがて、米国の多くのテレビ脚本家のオフィスでも、スパークリングウォーターが愛飲されてはじめます。オフィスでラクロワが簡単にまとめ買いできるようになってからは、ペリエからラクロワにブランドスイッチが起こるようになっていきました。オフィス用に購入し続けているうちに、脚本家の中には、上司に「ラクロワとコラボしてテレビのエピソードに入れたい」と持ちかける人も出てきました。多くのライターは、ケーブルネットワークの番組を含め、自分たちのテレビ番組にラクロワを取り入れようとしました。

マイクロインフルエンサーに注力したSNS戦略

人々はオンラインでダイエットの過程を記録し、食べている物やどんな運動をしているかを写真に撮る傾向があるため、パッケージ変更後のフォトジェニックな缶は、SNS映えする写真を撮るための完璧な小道具になります。

ラクロワのマーケティングチームは、コカコーラやペプシのように大きなマス媒体を買うのではなく、SNSマーケティングに注力しました。特に早い段階からマイクロインフルエンサー(フォロワー数は少ないものの、特定のコミュニティーで強い影響力を持つ人)との関係構築に力を注いできました。

ラクロワに関連するハッシュタグが付くと、フォロワー数にかかわらず、ラクロワチームからメッセージが来ることは稀ではありません。自社製品に興味をもってくれるユーザーとのコミュニケーションに並々ならぬ力を注いでいることが伺えます。

このようにして、ラクロワは中西部の主婦にしか知られていない商品から、全米のミレニアル世代に好まれる健康飲料へと成長していきました。ラクロワの成功ストーリーはまさにブランド戦略の重要性を物語っています。ブランドの強みを定め、ターゲットとメッセージを明確にしたことによって、一貫した強いマーケティングを展開することができたのでしょう。

Ys and Partnersではアメリカと日本の両国で、ブランド戦略と調査をはじめとする、統合的なマーケティングのご支援を行なっております。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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参照元

  1. https://www.quirks.com/articles/la-croix-owes-success-to-packaging-research
  2. https://www.nytimes.com/2015/10/04/upshot/soda-industry-struggles-as-consumer-tastes-change.html
  3. https://www.business2community.com/marketing/marketing-that-doesnt-look-like-marketing-the-la-croix-story-02115595

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