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アップサイクル食品とは、メインの製品が出来上がった後、通常は捨てられてしまう部分を使って作られた食品のことです。一部の企業では、調理・製造過程で使われていない部分を集めて、全く新しい食品を作っています。これらの企業は環境に優しいビジネスを推進しており、現在アメリカの埋め立て地の多くを占めている食品廃棄物の削減に力を入れています。
食品廃棄物との戦いは、一見困難なように見えます。一部の文化圏では、廃棄物の発生を防ぐため、動物や植物のすべての部分の活用を優先していますが、アメリカでは廃棄物に対する意識は高くありません。FDA(食品医薬品局)によると、アメリカの食糧供給の約30〜40%が無駄になる運命にあります。[1]また、埋立地の多くは食料廃棄物に利用されており、2010年の食品業界における食料廃棄による損失は1610億ドルでした。
今、無駄になった食品とその使用可能性を模索すべく、新たな食品が市場に出てきています。アップサイクル食品協会のウェブサイトによると、アップサイクル食品は次のように定義されています。
“アップサイクル食品は、従来であれば人間に消費されることのなかった食材を使用し、検証可能なサプライチェーンを使って調達・生産され、環境に良い影響を与えるもの。”[2]
アップサイクルという言葉を聞くと、「スリフティング(節約)」という、何年も前から親しまれている概念を思い浮かべるかもしれません。古着やアイテムを再利用するというコンセプトは、経済的な余裕がないという理由で、ミレニアル世代の間で特に人気があります。そんな中、このミレニアル世代の古着への愛から、もう一つの人気のある趣味、アップサイクルが生まれました。これは、本来の目的に合わなくなったものを、新しい目的を持った真新しいものに変える、というものです。これには、何かをアートに変えたり、家で使う新しい便利なアイテム制作のパーツに使ったりすることも含まれます。
画像:子供のおもちゃにアップサイクルされたタイヤ
食品のアップサイクルという概念は新しいものではありません。食品・飲料業界において、長年にわたってゆっくりと成長してきました。アップサイクルされた食品廃棄物は、2019年までに467億ドルの価値となっていました。アップサイクル食品協会は2019年10月に発足し、現在100社以上の会員企業を擁しています。それらの企業を合わせると、アメリカ国内では400以上のアップサイクル食品が販売されています。[3]アップサイクル食品協会の現在の目標は、「アップサイクル」という言葉を「オーガニック」という言葉と同じように食品業界で認知させることです。
では、どのような食品がリサイクルされ、どのような製品が市場に登場しているのでしょうか?この10億ドルの概念にまだ懐疑的な方のため、この業界の飛躍的な成長に貢献している2つの主要な成功企業をご紹介します。
レイジーベアティー
2017年に発売された「Lazy Bear Tea(レイジーベアティー)」は、主成分がカスカラである紅茶飲料です。スペイン語で「皮」や「殻」を意味するカスカラは、コーヒー豆を含有する果実であるコーヒーチェリーの乾燥した皮のことです。創業者の一人であるダニエラ・ウリベ氏は、コロンビアのコーヒー農場で育ちました。農場の周りに山のように積まれたカスカラをよく目にしていましたが、肥料として再利用できるものもありましたが、ほとんどが無駄になっていました。ある日、ダニエラは初めてカスカラ茶を飲み、家族の農場にある不要になったカスカラにもっと良い使い方があることに気付きました。カスカラを使ってコーヒーとは別の飲み物を作るというのは、アメリカではまだかなり新しいアイデアですが、決してその考え自体は新しくはありません。イエメン、エチオピア、ボリビアの農家は何年も前からカスカラをお茶に使用しており、場所によってはコーヒーよりも安価に作れることから人気があります。[4]2020年現在では、スターバックスでもカスカラシロップを使ったドリンクを注文できるようになっています。
魅力的な味でコーヒーと同程度のカフェインが含まれているだけでなく、抗酸化物質も含んでいることに加え、レイジーベアティーでは、社会的・環境的な影響力を持っていることを誇りにしています。レイジーベアティーが購入するカスカラは、中央および南アメリカの小規模農家から来ており、コーヒー生産を通じて発生する食品廃棄物の量を積極的に減らしながら、コーヒー農家の賃金を上げることに貢献しています。コーヒー農法を生計の糧としている世界の2500万世帯以上の人々に、未使用のカスカラを販売する機会を提供することで、彼らを支援することができるのです。[5]
画像:共同創業者のダニエラ・ウリベさんがカスカラの山の前に立つ様子(レイジーベアティーのツイッターアカウントより)
リグレインド
レイジーベアティーが飲み物(コーヒー)を作る際の副産物を別の飲み物に利用していたのに対し、ReGrained(リグレインド)は、飲み物を作る際の副産物を食品に変えるスタートアップ企業です。
長い間、ビールを醸造する際に発生する穀物の廃棄物は家畜に与えられたり、堆肥として利用されたりしており、農家と醸造家はできるだけ廃棄物を排除しようと固い絆で結ばれていました。しかし、近年、都市部でのクラフトビールや地ビールの人気は絶大なものとなっており、飼料となる家畜がいなかったり、新鮮な作物を育てるための広大な畑がなかったりするため、都市部において趣味でビールを作る人々は過剰な穀物廃棄物を生み出していました。これらの小規模な醸造所や趣味として製造されるビール6缶につき、1ポンドの穀物廃棄物が発生しています。地ビール醸造所、クラフトビール醸造所、カジュアルな醸造家の数が非常に多いため、都市部では年間100万ポンドの穀物廃棄物が発生していることになります。[6]
趣味でビールの醸造を始めたダニエル・カーツロック氏は、1回の醸造ごとに大量の食品廃棄物が発生していることに頭を抱えていました。彼と彼の友人であるジョーダン・シュワルツ氏は、最終的には残った穀物を使い、レシピを作ることにしました。米国農務省の農業研究サービスと協力して、彼らは使用済みの穀物を消費可能なものに戻す方法を考案し、ビール業界では「使用済みの穀物」と呼ばれていたものを「Supergrain+」と名付けました。彼らはSupergrain+を使ってプロテインバーを作り、家族や友人を介して販売したり、クラウドファンディングを行ったりしました。2020年現在、彼らはSupergrain+をより多くの製品に投入するため、B2Bでの販売にも力を入れています。2018年、ダニエル氏とジョーダン氏が設立した、Supergrain+で作られた製品を作って販売する会社「ReGrained(リグレインド)」が、フォーブスの毎年恒例の「30アンダー30」リストで評価されました。
画像:リグレインドのプロテインバー(ウェブサイトより)。現在売り切れ中。
食品のアップサイクルは環境に役立つだけでなく、「メッセージや目的を持ったブランドは買う価値がある」と考える消費者の意識の高まりから、マーケティングにも有効に作用します。多くのミレニアル世代(25~37歳)とそれ以下の世代(18~24歳)は、ブランドの目的や意図を知ることを重要視しているためです。アップサイクル食品を推進している企業は、最初から若い世代にアピールするため、環境への配慮、無駄遣いをしないことへの配慮、そして何よりも消費者一人ひとりへの配慮を行う、といったような明確なメッセージを持っています。
アップサイクル食品とそれを推進するブランドのパワーは、2020年後半よりますます増していくでしょう。
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