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米国マーケティングトレンド研究会 2021.04.16

カルチャー理解:なぜアメリカ人はこうもオリンピックに関心がないのか?

2020年の東京オリンピックをめぐっては、当初の開催延期から役員のセクハラ発言、さらには大阪府の公道での東京五輪聖火リレー中止など、さまざまな問題が噴出しており、こういった情報がアメリカのニュース報道を賑わしていると思われるかもしれません。しかし、実際のところ、アメリカではここ数年、オリンピックへの関心が一貫して薄れていきています。

内政不安や国内のさまざまな問題、そしてもちろん、新型コロナウィルスのワクチン接種などに気を取られ、この世界的なイベントは一般的なアメリカ人の心から離れていっています。

グーグル・トレンドで検索してみると、パンデミックが始まって以来、アメリカでは「東京オリンピック」という検索キーワードはそれほど頻繁には検索されていません。2020年の3月後半から4月前半頃に多くのロックダウン令が発令され、2021年の1月までは、オリンピックへの関心が一貫して低い状態であったことがわかります。

しかし、なぜ開催の半年前になって東京オリンピックへの関心が急に高まったのでしょうか?この時期のアメリカの出版物を見て、ネット上で関心が高まっているように見える理由を探ってみましょう。

新型コロナウィルス感染とオリンピック規模の集いをめぐる不安

本サイトの別記事でも紹介していますが、アメリカ人は全体的に、ワクチン接種が完了する前にオリンピックを開催することに懸念を抱いていました。オリンピックを開催しても問題ないという人と、世界中の人々がワクチン接種を受けられるようになるまではオリンピックを中止すべきだという人とに分かれたようです。1ワクチンの普及が進み、多くの人がワクチンを接種するようになった今でも、より多くの人がワクチンを接種する前に大規模な集会を再開することには、ためらいがあります。

上のトレンドグラフで見たように、2020年を通して、東京オリンピックへの一般的な関心は、延期が正式に発表された頃に少しだけ注目度が上がった程度で、安定して低い状態が続いていました。オリンピックがアメリカで注目されていなかった理由はいくつかありますが、アメリカでは他に多数の問題があったからと言っていいでしょう(新型コロナウィルスへの対応、大統領選挙、ジョージ・フロイド氏の死にまつわる文化的な騒動など)。このように多くの危機に直面していたため、これらの問題が解決された1月下旬に東京オリンピックに向けて注目度が急上昇したと考えられます。

虚偽の情報で注目度が急上昇

今年に入ってようやくアメリカ人が東京オリンピックに注目したのは、1月21日にロンドン・タイムズ紙が「オリンピックは委員会が内々に中止にし、日本は次のオリンピックは2024年に開催されるという事実を世界に発表するタイミングを待っている」と主張する記事を発表した時でした。この記事の冒頭文は、「日本政府は、新型コロナウィルスのために東京オリンピックを中止しなければならないと内々に結論づけており、次の開催可能な年である、2032年の東京大会開催の確保に焦点を当てている」という衝撃的なものでした。2

24時間が経過する前にこの主張は否定され、2021年に再び大会を中止、または延期する計画はない、との声明が発表されました。

アメリカ人はまだオリンピックに関心があるのか?

画像:ウィキペディアに掲載されている2016年リオ大会のメダル獲得数3

3月の最終週になっても、出版物にはオリンピックを開催すべきかどうかについての意見が掲載されています。とはいえ、非居住者の観戦が禁止された今、一般のアメリカ人がオリンピックに注目するインセンティブはさらに低下していると言えるでしょう。

アメリカのニュースを賑わすものといえば、最近では著名な委員会メンバーのセクハラ騒動が取り上げられています。一生懸命トレーニングしているアスリートのことはたまに取り上げられるだけで、アメリカの一般家庭では、オリンピックへのワクワク感が漂っていないように感じられます。実際、2016年には、オリンピックの独占放送権を持つチャンネルNBCは、視聴率が大きく落ち込んだと報告しています 。4これは、一部の著名なアスリートにファンがついていることを除けば、アメリカの視聴者がこのイベント自体にそもそもあまり興味を持っていないことが原因だと考えられます。これは、オリンピックでアメリカ人選手が安定して金メダルを獲得してきていることも影響しているのかもしれません。

つまり、アメリカ人が上位に食い込んでも観客は驚かないので、観戦に投資しないのです。過去2回の夏季大会では、アメリカが全体のメダル数を大きくリードしており、それが正しい解釈かどうかは議論の余地がありますが、全体的な感覚としては、アメリカ人は勝利を確信しているので、選手を見たり応援したりすることにエネルギーを注ぐ必要がない、ということなのです。

人々は、予防接種を受け、通常の生活に戻ることに気を取られているため、今年のオリンピックに対するアメリカ人の関心は、依然として家にいることを強いられているかどうかで変わってくると思われます。

2028年にロサンゼルスでオリンピックが開催されるとき、このイベントに対する無関心な雰囲気がどのように変化しているのか、興味深いところです。

 


参照元:

[1] https://morningconsult.com/2021/02/03/tokyo-games-americans-support-postponement/

[2] https://www.thetimes.co.uk/article/japan-looks-for-a-way-out-of-tokyo-olympics-because-of-virus-lf868xfnd

[3] https://en.wikipedia.org/wiki/2016_Summer_Olympics_medal_table

[4] https://slate.com/culture/2016/08/nbcs-olympics-ratings-were-way-down-is-that-because-the-u-s-is-too-good-at-winning.html

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